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【 第55回・労務管理を会話で学ぶ 🤔 】  「36協定の特別条項」

年度末に向け、『時間外労働・休日労働に関する協定』(以下、『36協定』という)の締結にかかる準備を始める企業も多いかと思います。
36協定に『特別条項』を設けている場合の実務上の注意点を説明します。


実際の現場では、リアルな疑問が?? 早速、現場をのぞいてみましょう!

弊社では毎年『36協定』を締結しています。
新型コロナウイルスの影響が少なくなり、来年度は残業時間が増えてしまいそうです。
そのため36協定に特別条項を設けようと思う
のですが、どのようにしたら良いのでしょうか?

36協定により時間外労働をさせることができる限度時間は1か月45時間です。
この時間を超えることが見込まれる場合は特別条項を設ける必要があります。


その際には、『限度時間を超えて労働させる場合における手続』と『限度時間をこえて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置』を定めて36協定に記載する必要があります。
例えば手続方法を『労使協議』とした場合、事前に従業員と会社で場を設け協議することが求められます。
『過半数代表者への申し入れ』であれば、会社が従業員の過半数代表者へ事前に書面等で申し入れます。


事前に、限度時間を超えた場合の手続方法や健康を確保するための措置を決めておく必要があるんですね!
これで来年はもし残業が続いても大丈夫です。

特別条項を設けても、上回ることができない労働時間数が決められています。
具体的には、①~④の”すべてを満たす”必要があります。


①時間外労働が年720時間以内
②時間外労働と法定休日労働の合計が月100時間未満
③時間外労働と法定休日労働の合計について

『2か月平均』『3か月平均』『4か月平均』『5か月平均』『6か月平均』がすべて1か月当たり80時間以内
④時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6回まで
(3か月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間)

特別条項を設けても、きちんと残業を把握・管理する必要があるんですね。

そうなんです。


特に④に関しては、1年のうち6か月は時間外労働を月45時間以内に収めなければ、直ちに法違反となります。
そのため、慢性的に時間外労働が月45時間を超える見込みの場合は、時間外労働の削減に向けた取組みが早急に求められます。


③の『複数月を平均した時間外労働時間』についてもう少し詳しく教えてください。
どのように残業時間を確認したら良いのでしょうか?

例えば特別条項を1か月90時間と締結したとします。
1か月90時間の範囲に収まっていたとしても、2~6か月平均で月80時間以内という基準があります。
当月に90時間の時間外労働があった場合には、その翌月は70時間以内に収めることが求められます。
単月の管理のみではなく、複数月の時間数の管理も必要になります。
また、この2~6か月の平均は、前後の36協定の期間をまたいだ期間も適用されます。
例えば、36協定を2023年4月1日から2024年3月31日までの1年間で締結している場合、2か月平均は2023年4月と5月のみならず、2023年3月と4月でも確認します。

たくさん残業をした後は、複数月の確認が必要ということですね。

やむを得ない理由から特別条項を締結していることもあると思います。
しかし、そもそも特別条項を適用するような時間外労働自体を減らすことが必要かもしれませんね。

その通りですね。
特別条項を締結するのであれば、今後は適切な形で残業を行い管理していこうと思います。
ありがとうございました!


POINT

①特別条項を設ける場合、『限度時間を超えて労働させる場合における手続』と『限度時間をこえて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置』を36協定に記載する必要がある。
➁特別条項を設けても、上回ることができない労働時間数が決められていて、時間外労働の管理が必要となる。
③慢性的に時間外労働が月45時間を超える場合は、時間外労働の削減が必要となる。